マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

活動実績が評価され「博報賞」に続き「ESD精励賞」受賞!
「チーム仰星」として一丸となって取り組む探究学習

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部

1983年、大阪府枚方市に東海大学付属仰星高等学校が設立され、1996年に中等部も開校。東海大学創立者の松前重義は、学園の原点「望星学塾」において「身体を鍛え、知能を磨くとともに、人間、社会、自然、歴史、世界等に対する幅広い視野をもって、一人ひとりが人生の基盤となる思想を培い、人生の意義について共に考えつつ希望の星に向かって生きていこう」と語った。この精神を礎に、中等部ではSDGsの課題と向き合う探究学習への取り組みに注力している。そのひとつである「研修旅行」について、中等部副校長の鞆安孝郎先生にお話を伺った。


SDGsの観点からアプローチする
「課題解決プログラム」と「研修旅行」

建学の精神に基づき、多様で変化の激しい社会において、生徒一人ひとりが目指す将来に向けて歩んでいくための能力・自信を育む教育を実践する東海大学付属大阪仰星高等学校中等部。社会に求められる能力を「TG10Cs」(Team Gyosei 10 Competencies:仰星で身につける10の力)と定義し、「チーム仰星」を掲げ、授業や部活動、行事などに一丸となって取り組んでいる。

特長的なカリキュラムは、2020年度から本格的に推し進めている探究学習だ。同校独自の「探究サイクル」を基本に、SDGsの観点から身の回りにある課題を発見。教科学習と学外活動をリンクさせて課題解決につなげていく、「課題解決プログラム」と「研修旅行」を実践している。

「中1における取り組みは、SDGsを知ることから始まります。地球規模で抱えている問題を知り、SDGs17の目標の必要性を意識します。中2では地元枚方市をSDGsの視点から見つめ直すことで、地域の抱える課題やまちの魅力を認識し、『持続可能なまち』を実現するには地域や関係機関等、多くの人々の協力が必要であることを実感します。

中3ではSDGsの視点から地域や校内での課題を挙げ、解決への方策を考え行動変容へとつなげます。これらをふまえ、今年6月に実施された各学年の『研修旅行』を紹介します」(鞆安孝郎副校長)

Team Gyosei for SDGs !
中等部各学年での研修旅行

①アイデンティティを高める三保研修
中等部1年では1泊2日の「三保研修旅行」が実施された。主な目的は、東海大学発祥の地を訪れ、富士山を仰ぎ、清水港や三保の松原を見渡しながら、東海大学付属生としてのアイデンティティを高めることにある。

海洋スポーツ体験をはじめ、東海大学の研究機関「海洋博物館」でのウミホタルの発光実験やキャンパス見学を実施。建学の歌に出てくる「鉄舟寺」も訪問する。「東海大学には多様な学部・学科がありますが、静岡キャンパスの海洋学部を目指して本校に進学する生徒も毎年いるのです」と鞆安孝郎副校長は話す。

②「未来のコミュニティ」を訪ねる四国研修
中等部2年では、2泊3日でSDGsの最先端として知られる徳島県上勝町を訪問。主な目的は、地域のさまざまな環境や取り組みについて認識を深め、今後の探究活動の基礎となる課題のたて方・発表の仕方などを身につけることである。

「上勝町は人口1365人、住人の半分は65歳以上です。株式会社いろどりという事業を立ち上げ、日本料理に欠かせない『つまもの』という、季節の葉っぱをビジネスとして成功させた話を聞かせていただきました。高齢者でも意欲的に働くことが出来る環境を、クリティカルシンキング(事象の根源をバイアスなしに理解すること)で生み出すという興味深い内容に生徒たちは熱心に聞き入っていました。

日本で初めて『ゼロ・ウェイスト宣言』をした上勝町では、ゴミを43種類に分別し、生ゴミも各家庭で堆肥として再利用しています。徹底してリサイクルに回し、廃棄にかかった費用も以前より5分の1程度に押さえられるようになったといいます。

2日目は民泊で星空を眺め、野菜や果物、山菜を収穫し、『うだつの町並み』を散策。3日目は高松市内を見て回りました。地元枚方市のまちづくりに生かせるたくさんの学びや気づきが得られたと思います」(鞆安孝郎副校長)。

③国際理解と異文化体験のハワイ語学研修
中等部3年の5泊7日ハワイ語学研修の目的は、国際理解(実践的英語研修)と異文化体験である。到着後、宿泊先のハワイ東海インターナショナルカレッジ(HTIC)で5日間のプログラム内容と施設の使用方法について説明を受け、HTICキャンパスツアーとショッピングを楽しむグループに分かれて行動。2日目午前中の授業は、「英会話・アメリカ文化」「スピーチ」「ハワイアンカルチャー」に分かれて受講。

午後はアクティビティを楽しみ、Evening Lessonでは鞆安副校長による星空観測教室も開講された。3日目と4日目はボディボードなどを楽しんだ後、最終日のプレゼンテーションに向けて準備を整える。このプレゼンでは日本文化を発表し、現地スタッフから講評をいただくことになっている。その他、ワイキキ散策や、夕食後、練習を重ねていたフラダンス発表会も開かれた。

そして最終日。プレゼンテーション発表会「Closing Ceremony」では一人ひとりの名前が呼ばれ、修了証とレイ(お祝いの首飾り)を受け取る。午後からはポリネシアンカルチャセンターでフィジーやトンガ、サモア、アオテアロア(ニュージーランド)の文化にふれ、フラ(ダンス)やハカ(踊り)を鑑賞した。

2023年「博報賞」に続き
「ESD精励賞」を見事受賞

2023年、東海大学付属大阪仰星高等学校中等部は、2020年から進めてきた「10年後、戻りたくなる枚方の街」と呼ばれる地域発展プロジェクトが高く評価され、「第54回 博報賞」*1を受賞した。

また同年、『SDGsをテーマとした課題解決プログラム』において「第14回ESD精励賞」*2を受賞した。

ESDとは「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」の略で、ESD大賞は、持続可能な社会の構築に向けて問題意識をもって学び、判断し、行動できる人材の育成の推進を目的とし、この理念に基づく取り組みを積極的に実践する全国すべての校種から毎年選定されるものである。

「一連の取り組みによって、生徒のプレゼン力やコミュニケーション力の伸長は目をみはるものがあります。本校の建学の精神では、持続可能な社会の創り手の必要性を80年以上前から説いています。今後も時代の求めるメッセージに敏感でありつつ、普遍的な価値につながる学習活動への取り組みを推進し、『ユネスコスクール最優秀賞』に選定される活動に力を入れてまいります」(鞆安孝郎副校長)


*1 「博報賞」公益財団法人博報堂教育財団主催(後援:文部科学省)は、児童教育現場の活性化と支援を目的として財団創立とともにつくられた。日々教育現場で尽力されている学校・団体・教育実践者の「波及効果が期待できる草の根的な活動と貢献」を顕彰するものである。
*2 「ESD大賞」NPO法人日本持続発展教育推進フォーラム主催(後援:文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、(株)教育新聞社、(公財)ユネスコ・アジア文化センター、(公社)日本ユネスコ協会連盟)顕彰は、文部科学大臣賞、ESD優秀賞、ESD精励賞、ユネスコスクール最優秀賞がある。


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東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部 https://www.tokai-gyosei.ed.jp/