マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

英語を使い、異文化に触れ、世界の課題を知る
グローバル探究「台湾研修旅行」で深める主体的学び

雲雀丘学園中学校・高等学校

企業が創立に関わった数ある学校の中で、ひときわ注目度と人気が高い
のがサントリー創業者・ 鳥井信治郎氏が手がけた雲雀丘学園だ。今春の進学実績では難関大を含む国公立大に112名、関関同立をはじめとする私立大には延べ1067名が合格。
しかし目に見える実績以上に同校が重視しているのは探究型の授業だ。生徒たちが興味・関心をもち、主体的にチャレンジできるさまざまな探究型プログラムを展開している。
本年3月10日から14日まで、初の「台湾研修旅行」を実施。「探究」と「グロ―バル」が融合した学びについて参加者に取材した。


高2 中川 陸聡さん 生徒会 高校会長
高2 中嶋 紗香さん 生徒会 高校会計
(以下敬称略)

オンライン交流からリアルでの交流へ
初めての「台湾研修旅行」

雲雀丘学園では、探究型学習を日常的に取り入れ、さまざまな形で実践している。自ら学び、考え、行動する力を育むために、「探究ゼミ」「探究プロジェクト」「グローバルプログラム」を通して、社会や企業、大学との交流・連携を進めている。

「本校には実践型のグローバルプログラムが数多くあります。コロナ禍で海外研修や留学がストップしたことをきっかけに、オンラインの利点を活かし、海外の生徒たちと英語で交流する活動を充実させてきました」
(入試広報部部長 今岡祐資先生)

「『台湾研修旅行』は、コロナ禍で海外研修や対面の学校交流ができない時期に、兵庫県国際交流協会からご紹介いただいたのがきっかけです。2021~2023年までオンライン交流を続け、2024年3月に渡台しました」
(グローバル探究部部長 森川大伍先生)

〝初めまして〟ではなく
〝やっと会えたね〟

――オンライン交流時に心がけていたことから教えてください。

中川 2023年は、「次の年にこの人たちと台湾で会えるのだ」ということをずっと意識していました。オンライン研修時は、協働して行う課題にバディで取り組むのですが、課題以外でもラインでのおしゃべりや電話などでコミュニケーションをとっていました。

中嶋 私は研修前のオンラインミーティングには参加していなくて、今回からの参加です。何をやるのかドキドキしていましたが、共通の課題に取りかかるときに周囲から、「こうするんだよ」とやさしく丁寧に教えてもらい嬉しかったです。現段階の英語力では意志の疎通が図れない場面もあったので、英語を学ぶモチベーションが上がりました。

――日程ごとに心に残ったことを紹介してください。

中川 1日目はご飯を食べ(笑)、2日目に新竹市盤石高級中學(St.Peter Senior High School)に行きました。交流していた子たちを初めて見たとき、“今までパソコンを通して接していた子が目の前にいる”と、とても不思議な気持ちになりそのままハグ(笑)。その日は一緒にゲームをやったり、缶バッジやマグカップを作ったりしました。

3日目は新竹サイエンスパークとTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)を見学。TSMCが最近熊本に進出し、半導体バブルの様相を呈しているというニュースを見ていたので楽しみにしていました。

日本は科学技術大国というイメージだったのですが、TSMCという企業を知り、科学技術において日本が届かない分野があるのかと正直びっくり。東京ドーム140個分という広大な敷地に、グローバルに活躍する台湾企業が本社や研究施設、工場を構えているほか、世界各国の先端企業の工場や支社も置かれています。

技術の進歩が年代別に比較できる展示などがあり、大変わかりやすかったです。

最終日は、中華民国の元総統蒋介石を記念して建てられた中正紀念堂を訪問。台湾は複雑な背景があるため、大変緊張した空気感を感じました。

ガイドさんが、「台湾人は『自由』や『民主主義』を自分たちが守ってきたというプライドがある」と解説。この言葉の意味は、中正紀念堂を訪ねてわかりました。歴史の中で、自由と民主主義を求めて戦い、命を落とした人もいる。

そんな中でも立ち上がり、自分たちで自由や民主主義を掴みとってきた人たちに関する記録が展示されていたからです。台湾は今年1月に総統選挙がありましたが、投票率の高さには驚きです。特に若者の投票率が高く、日本との違いを考えさせられました。

中嶋 1日目は緊張していて記憶にありませんが(笑)、2日目の学校訪問の際は、台湾の方々が一糸乱れぬ歓迎のパフォーマンスを披露してくれました。実際に交流していた皆さんと会い「やっと会えたね!」と緊張が一気に吹き飛び、和気藹々と話せました。クラスの見学に行ったとき、先生を敬いながらも友だちのように距離が近いように感じました。

3日目のTSMCでは、タッチパネル式展示などがあり、最先端の技術を使っていることに感動。中正紀念堂では、国を思う気持ちにふれ、兵士の方々の行進などを見ながら、歴史と伝統を肌で感じました。

――雲雀丘学園の先輩による大学案内はいかがでしたか?

中川 先輩が通っている台湾大学は1945年設立。台湾最難関・最大の名門大学です。日本統治時代の建物が多く残っていて、大変興味深かったです。

中嶋 キャンパスツアーをして中央広場で質疑応答。大学というよりもひとつの街のようでした。先輩の話を聞き、「勉学を海外で」という選択肢も素敵だなと感じました。

――台湾研修旅行での学びを、今後の活動にどうつなげていきたいですか?

中嶋 今回、改めて英語の面白さを学びました。海外留学も視野に、下の世代に『英語を使ってこんなに楽しいことができるんだよ』と広く、深く伝えていきたいです。

中川 普段ニュースなどで見ていた場所に実際に行くことができて本当によかった。日本と台湾の関係はひと言では言い表せないほど複雑ですが、正解のない問いに対していつも自分自身の答えを出せる人になりたいし、答えを導く人でありたいです。

今岡先生 本校の「やってみなはれ」精神は、今回まさに「行ってみなはれ」と生徒たちの背中を押してくれました。日本の教育はともすれば生徒を囲い込みがちですが、本校ではあらゆるフィールドに送り出します。そこが他校との差別化につながっているのかもしれません。これからも、関西で一番のビジョンと魅力にあふれる総合学園を目指して邁進してまいります。


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