国公立大学、難関私立大学とも合格者が増加
来年度は2コース新設で進路がより幅広く
大阪産業大学附属高等学校
「就職に強い!」との評判が高い系列の大阪産業大学への内部進学のほか、近年は国公立大や難関私立大への合格者数の伸びが顕著な大阪産業大学附属高等学校。4年後の創立100周年をひかえ、キャンパス整備が着々と進行中だ。来年度の募集からは、特進コースに「AS」、国際科に情報コミュニケーションコース「C」の2コースを追加し、ますますパワーアップする同校の今後を平岡伸一郎校長にお聞きするとともに、国際コース主事の合田早加江先生にはグローバルコースの新しい取り組みについて取材した。
国公立大合格者は倍増
さらなる進化へ向け「AS」を新設
記者 今春の大学入試の結果も好調だったそうですね。
平岡校長 はい。とくに国公立大学の合格者の伸びが大きかったですね。一昨年、昨年いずれも8名だったところ、今年度は、京都工芸繊維大学、大阪教育大学などに計16名が合格し、一挙に倍増しました。右肩上がりが続いている難関私大も同様で、関関同立が20名増加、産近甲龍が23名増加し、学校全体の学力が上がってきたなと実感しています。これも特進コースが“機関車”となって全体を引っ張ってくれているのが大きいと思います。
記者 貴校の特進コースについてご教示ください。
平岡校長 国公立大学への進学をめざす「AⅠ」、難関私立大学への進学をめざす「AⅡ」の2コースがあります。いずれも毎日実施する早朝テスト・終礼テストで基礎力の確実な定着を図りながら、高3の1学期末までに大学受験に必要な学習内容を修了。夏休み期間中には受験対策合宿、12月上旬から入試直前までは対策講座を実施しています。これまでは「AⅠ」の成績上位者による「特別選抜クラス」を設けていたのですが、実績があがっていることもあり、来年度の募集から独立した「AS」(定員40名)を設け、特進コースは3コース体制とします。
記者 新設される「AS」の位置づけは?
平岡校長 特進コースは学校全体の“機関車”ですが、「AS」は特進コース自体の“機関車”的な役割を担うものとなります。授業進度が速い分、スパイラル的な学習が可能となり、より一層知識を定着させます。従来の特別選抜クラスとの違いは、入学時からそれがスタートしているという点です。これまでと同様に進級時には特進コース内でクラスを再編成するため、混乱がないように教材は同じものを用います。先生方には「AⅡ」の生徒は「AⅠ」に、「AⅠ」の生徒は「AS」に引き上げる指導をお願いしており、今後は「AS」が核となり、進級ごとに学校全体がパワーアップしていくことに期待しています。
国際科新コースは
ITを駆使し世界経済の担い手を育成
記者 来年度は国際科にも新コースが誕生します。
平岡校長 国際科はグローバルに活躍する人材育成を目的に開設し、今年で32年目となります。改変を経て現在は外国語大学や海外留学などをめざす「グローバルコース(G)」のみですが、こちらが語学をツールとするものであるのに対し、新設する「情報コミュニケーションコース(C)」(定員80名)は、ITをツールに世界経済の担い手となる人材育成をめざします。Gコースを今後も継続的に発展させつつ、新設のCコースで国際科の厚みと幅をもたせることで、本校への志願者数アップにつなげたいと考えています。
記者 Cコースを特徴づけるカリキュラムを教えてください。
平岡校長 文理横断的かつ探究的な学習に、IT機器を駆使した高大連携、産学連携を採り入れようと考えています。系列の大阪産業大学とはこれまでも高大連携は行ってきましたが、すべて単発の授業でした。ちょうど大阪産業大学に来年度から情報デザイン学部が新設されるタイミングでもあり、1期生の2年次、3年次には年間を通じたカリキュラムを組む予定にしています。産学連携では、ものづくりの現場を実際に見学し、高校生目線のアイデアの発表なども考えたいと思っています。
記者 CコースではITツールも駆使しますね。
平岡校長 現在の3年生から1人1台のタブレット(Chromebook)を導入しており、今では全生徒がタブレットを活用した学習に親しんでいますが、先生方から「映像・音楽を駆使したプレゼンテーション力を養うには、やはりその分野でスタンダードとなっている『iPad』を用いるべき」とのご意見があり、Cコースの生徒には「iPad」で学習していただくことにしています。
大いなる刺激を受けたアメリカ修学旅行
大いなる自信を得て帰国した1年留学
記者 Gコースの修学旅行が再びアメリカになりましたね。
合田先生 コロナ禍で中止していた海外への修学旅行を、昨年4年ぶりにGコースは他コースに先駆けて再開したのですが、物価高・円安の影響もあり、これまでのアメリカ(ポートランド)行きは断念し、オーストラリアに変更したという経緯があります。しかし先生方の間では「やはり、アメリカを見てもらいたい」という意見が多くあり、今年はアメリカ、それもロスアンゼルスに行くことになりました。ただ費用面を鑑み、修学旅行というには時季的に早いのですが、2年に進級してすぐの4月に敢行しました。
記者 どのようなスケジュールだったのでしょう?
合田先生 初日から2泊3日のホームステイがスタート。そしてエスペランザ高校の学生たちとの1日交流です。1対1のバディを組み、一緒に授業を受け、ランチを楽しんだりしました。男女問わずの組み合わせでしたので、カッコいい男子生徒のバディに名前を呼ばれた女子生徒は「ヒュー、ヒュー」と言われたりして盛り上がっていましたね(笑)。その夜は、大谷翔平選手が所属するドジャース対ナショナルズの野球観戦です。ちょうど黒人初の大リーガーとなったジャッキー・ロビンソンを称える記念日ということでキャップのプレゼントがあり、いい記念になったと思います。そして翌日はディズニーランド……と盛りだくさんな内容でした。帰国してからもしばらく生徒たちは興奮状態が続いていましたよ(笑)。大いに刺激を受けたようで、今から始まる2年生を頑張る! というモチベーションになったようです。
記者 現地では生徒たちが英語を使う機会はありましたか?
合田先生 エスペランザ高校ではもちろん、空港でも集合時間まで自由だったのですが、マゴマゴしている生徒は一人もおらず、買い物も英語で問題なくできていて、頼もしかったですね。
記者 昨年復活した「1年留学」の生徒もこの6月に帰国しました。
合田先生 今回は男子3名、女子1名の計4名がアメリカに行ったのですが、内気だった生徒が自信満々になっていたり、いい意味で自己主張をするようになっていたり、ホームシックを乗り越えハートが強くなっていたり、みんなそれぞれ“別人”になって帰ってきたことに驚きました。せっかくなので、今年8月に出発する生徒(1年留学が1名、3か月留学が4名)たちが、帰ってきたばかりの彼らに話を聞かせてもらう相談会を今回初めて開催しました。同じ学校に行く生徒もおり、「困ったときは、この先生が優しいよ」など、自身の経験で得たナマの有益な情報を提供していました。
記者 ほかにも何か新しい取り組みをされていますか?
合田先生 先日、教育事業を展開されているリクルートさん、ベネッセさんという2大企業に、海外を体験する意義をテーマに出張講演をしていただきました。普段接している教員とはまた違った観点の言葉が生徒たちには響いたようです。リクルートさんのオンラインチャレンジ「スタディサプリENGLISH」のEフェスタも昨年から生徒の間で盛り上がっていて、今年は全国1位をめざそう! と言ってがんばっています。
2028年の創立100周年へ向け
キャンパス整備が具体的に進行中
記者 2028年に創立100周年を迎えられます。
平岡校長 100周年に向けたキャンパス整備が具体的に進行し始めました。食堂は着工済みで、今年度中に竣工予定です。3階建てで茶華道部も使用し、合宿もできる仕様にします。また、現在駐車場となっている場所に新校舎を建設します。こちらは2027年1月頃に竣工予定です。
記者 新校舎は悲願だったそうですね。
平岡校長 現校舎は建設から60年ほど経過し老朽化が否めませんでした。1995年の阪神・淡路大震災でも倒壊することはありませんでしたが、大きなダメージを受けました。この震災をきっかけに学校の耐震化が叫ばれるようになり、安全性を兼ね備えた新校舎は、わたしも含め当時を知る先生方の30年来の悲願だったのです。それがやっと実現する。110周年、120周年へと導いていく若い先生方に、「次をお願いします」という気持ちです。
記者 あらためて、創立100周年をどう捉えておられますか?
平岡校長 本校は、昭和3年に鉄道マンを即戦力として育成する「大阪鉄道学校」としてスタートしました。100年がたち、本校は今、大学の附属高校となり、鉄道に限定することなく、さまざまな分野で活躍する人材育成に励む学校となりました。こんなことになるとは創立者・瀬島源三郎は想像もしていなかったでしょう。しかし、瀬島源三郎が掲げた建学の精神「偉大なる平凡人たれ」は100年たった今もなお継承されています。そこが私立学校の良いところではないでしょうか。100年は重いと思っています。それだけに式典は重要で、学園に携わられたすべての方々にご参加いただけるイベントにしたいと考えています。
創立100周年に向けたキャンパス整備というハード面と、年々大学入試実績をレベルアップさせているというソフト面の両面で充実を図っている大阪産業大学附属高等学校。
来年度からは、特進コース「AS」、情報コミュニケーションコース「C」の募集が始まり、進路の幅はさらに広がる。未来に向けたさまざまな取り組みに、これまで以上の注目が集まりそうだ。
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