「Team橘」でチャレンジを続け
高い学力とともに豊かな人間力を育む
京都橘中学校・高等学校
明治時代中期、女性の社会的自立を目的に「京都女子手芸学校」として開学し、一昨年120周年を迎えた京都橘中学校・高等学校。明治天皇が眠る伏見桃山陵を臨む緑豊かな環境ながら、JR、近鉄、京阪の各最寄り駅から徒歩圏内にあって利便性は高い。「文武不岐」でクラブ活動も人間教育につなげ、男子サッカー部、女子バレーボール部、陸上競技部は全国大会の常連。吹奏楽部にいたっては、アメリカや台湾から招待を受ける世界レベルだ。魅力ある学校づくりをめざした「未来プロジェクト」の今後の予定や成果について、安田文彦校長に伺った。
中学に「Vα」クラスを来春新設
先取り・深掘り学習で高みをめざす
京都橘では、高い学力とともに豊かな人間力を育むため、中高6年一貫の体系的カリキュラムを組んでいる。
第1タームの中学1・2年では、あいさつや掃除などの「凡事徹底」、予習・復習の繰り返し学習による「基礎基本定着」、企業訪問や宿泊研修などの「体験学習」がテーマ。第2タームの中学3年・高校1年では、チーム活動で「イニシアチブの涵養」をしつつ、多彩な学びの機会で「学力伸長」を促し、さらには、「キャリアデザイン」で生徒が描く未来を全面的にサポートする。そして3つのクラス(難関国公立大学、国公立大学および難関私立大学、看護医療系を含む私立大学)に分かれる高校2・3年の第3タームへとつなげている。
2年前、高校を3コース制から2類型に変更するとともに、中学は1クラス増やして3クラスに。少子化が進むなか、募集90名のところ今年度は101名が入学しており、人気の高さがうかがえる。
来春、この3クラスのうち1クラスを、より高みをめざす「Vα(アルファ)」として募集する。
「中1から高1までの従来のVコースは、基礎・基本を徹底することで足元を固めることに重きを置き、高校の学びを“ゆるやかに”先取りしていましたが、なかには“足踏み”を感じる生徒がいました。Vαはそういったニーズに応えるもので、第1タームから学習の先取り・深掘りをしながら、いろいろなことに興味や関心をもってもらえる時間もしっかり取ります」
外部入学者混在で進路別クラスに分かれる第3タームだが、「Vα」は内部進学者のみで編成し、6年一貫で難関国公立大学をめざす。
「生徒数を増やすと全体的な学力が低下すると思われがちですが、チャレンジしたい気持ちにさせるVαのようなクラスを設定することで、そういった懸念も払拭されます」と安田校長。進級時にVクラスから「Vα」へ、「Vα」からVクラスへの変更も可能だ。
京都らしいユニークな探究学習
学校では学べない体験で刺激を
「これからの時代、いろいろなことに興味・関心をもち、調べて自分の考えを周囲に伝えながら課題を解決する行動力が必要」と考え、探究学習に注力する同校。
とくに中学では、京都の学校ならではのユニークな取り組みが実を結んでいる。
中2では、地元の活性化に尽力する若手起業家グループ「U35」の協力のもと、さまざまな企業の課題について市場調査、企画会議を経て、中学生なりのアイデアで案を出し、校内で発表。今年2月に開催された「クエストカップ」全国大会に出場し、企業探究部門で佳作に選出された。
中3では京都を代表する伝統工芸品を知る授業を昨年から実施している。和蝋燭や提灯など、伝統工芸士の講話や制作現場の見学を踏まえ、その良さをどう発信するかグループで考え、販売も体験した。
「学校では学べないことばかりで、生徒は大変刺激を受けていました。楽しい内容で、大人が聞いても面白かったです。中学生の販売力で先方も売り上げがプラスになったそうで、お互いにWin-Win。今後も継続しようということになりました」
高1では探究学習の総仕上げとして、沖縄県のうるま市、那覇市およびカンボジアの3か所に分かれて研修旅行を実施。中2の研修旅行でも来春入学者から海外渡航(セブ島)を導入予定だ。
「セブ島は高校の留学先としても人気がある場所です。そこに、高校生ではなく中学生が行きます。京都を知る学習の延長で、文化の違う環境で改めて京都を深く知り、京都の良さを現地の方に伝えるような研修旅行にしたいと思っています」
まずは教職員が〝魅力ある大人〟に
進化し続ける「Team橘」
同校には、いわゆる学内予備校の「ASTM(アスティム)」というシステムがある。2019年に導入して今年で6年目。すっかり定着している。
同校教員と外部講師による放課後の「TSゼミ」と土曜の「土曜ゼミ」のほか、自習教室「スタディルーム」では難関大学に通う同校卒業生チューターや常駐のアドバイザーが対応し、疑問や苦手をその場で解決。自立した人間を育てる教育理念に則り、強制ではなく自発的な学習を促すことで真の学力がつき、「学外の塾に通うより、進学実績で結果が出てきている」という。2024年度の大学入試は、京都大、神戸大など国公立大学に62名が合格。私立では、関関同立215名、産近甲龍310名と、ともに過去最高を更新した。
ただ、安田校長はこう言う。
「大学進学は、なりたい自分になるための“手段”であって、合格を“目的”にはしたくない。いろんなことを経験して、自分がどんな大人になりたいかを想像し、その実現に向けて勉強して志望大学に入り、学びを深めるというように、目的をクリアにする6年間にしてほしいですね」
魅力ある学校づくりをめざした「未来プロジェクト」では、教職員が一丸となって「Team橘」を形成し、さまざまな新しい取り組みにチャレンジしてきた。
来年度は、中学全学年が3クラス、高校も全学年が「選抜」と「総合」の2類型となり、ひとつの区切りを迎えるが、歩みは止めない。「生徒の一番身近な大人である教職員こそ、魅力ある大人であるべき」という安田校長の理想に向かって、「Team橘」は進化し続ける。
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